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Junki Hatabe

畑辺純希・ビーチバレー

長年培ったバレーボールの技術と持って生まれたセンスを活かし、
2015年、初の男子ビーチバレー代表入りを果たした畑辺選手。
その後もJVA強化指定選手として活動し表彰台の常連となるが、
夢の舞台である2020を目前に怪我で競技活動が困難に。
大きな壁が立ちはだかった今、何を思うのか。

お金事情 - 競技活動費ってどれくらいかかるの?

大会選びも
かけ引き

―― 畑辺選手、本日はよろしくお願いいたします!
さっそくですが、ビーチバレーって年間どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

畑辺純希(以下、畑辺) 国内大会を回るのに、だいたい年間50万〜80万円くらいかかります。
国内大会と言っても開催される試合数が毎年変わるので、それによって費用のばらつきはありますね。ツアーは7大会から、多い時で11大会。これも場所によって様々です。
家から近いところだと1万円程度で済みますが、遠方になると8万円ちょっとかかるかな。
ただ、必ずしも距離が遠いから高くなるという訳でもなく、会場までのアクセスのしやすさによって金額が異なります。例えば福井なんかは、新幹線に加えて現地でレンタカーを借りなければいけなかったり。

―― なるほど、なるほど。関東なんかは近場でも会場まで行きにくいところってありますもんね。それでも選手たちは、ほぼ全ての大会を回るんですか?

畑辺 基本全部回ります。ビーチバレーは各大会で獲得したポイントによって、ワールドツアーの出場が決まるので、若干ややこしい出場権ルールなんですよね。また、そのルール自体も毎年ちょこちょこ変更があり現在は過去1年間に参加したワールドツアーの直近の6大会のうちの成績の良いポイント4大会の合計ポイントがエントリーに反映される形になっています。大会に出れば出るほどポイントも増えていくのですが、勝敗によってはそれが逆効果になる場合も。

―― なんだかややこしいシステムですね。(汗) ポイント獲得のために出場しても、負けたらマイナスになるケースもあるという事か・・・。

畑辺 たくさん出場した上で勝ち続けるっていうのが勿論ベストなんですが、最終的な獲得ポイントのことを考慮すると出場する大会のレベルやタイミングなど、その選択もひとつのかけ引き、鍵になってきます。
あとは、大きな大会でもあまり人気のない国(中国やインド)なんかはポイントが獲りやすい。というのも、移動時間の長さや現地で食事や水が合わず体調不良になるケースが多く、世界の強豪チームも出場してこなかったりするので優勝を狙いやすいです。逆に、観光地としても有名で競技が盛んなヨーロッパの大会に出ると予選落ちなんてこともあります。

―― 大会選びも大変ですね。海外の大会のお話しが出ましたが、どのあたりに行くことが多いんでしょう?

畑辺 そうですね。海外遠征は1回あたり最低でも15万円くらいかかってしまうので、金銭面を考慮して近場で暖かいアジア圏が多いかな。本場はブラジルとアメリカと言われていて両方とも強豪国なんですが、なかなか頻繁には行けないですね。また、一年中気候が整っているロスも人気の遠征地のひとつです。

―― 屋外のスポーツは気候も重要ですよね。ちなみに他の競技の選手たちが海外に行く際は、自分でリーズナブルな宿を探したり、知り合いの家に泊めてもらうケースが多いようですが、ビーチバレーも毎回そんな感じですか?

畑辺 僕の場合は遠征先は開催国の協会が指定するホテルに滞在することが多かったですね。それ故に、貴重な体験ができるような場所もあり・・・(笑)

―― なになに、気になる!

畑辺 以前行ったブラジル遠征の合宿先が軍隊の人たちとの共同生活で、現場の人と同じものを食べるんですけど、時にサラダの半分が腐っていたり、何気なく隣に置かれた荷物が銃だったり。
衝撃だらけでしたね。もちろんそこで寝泊まりも。

―― え〜!!日本ではありえない衝撃の合宿ですね。何故そんなところに!?

畑辺 ・・・そこにビーチコートがあるから。

―― いや、名言みたいに言われてもww

畑辺 まあでも確かに、その場所はリオの中でもすごく良い立地でコートも4面設営されている上、大会運営もそこの人たちがやっているので、ブラジルの代表クラスの選手たちも頻繁にそこを利用していましたね。

―― 今までインタビューした中で最も変わった遠征事情・・・貴重なお話有難いです。遠征の他に費用がかかる部分はありますか?

畑辺 あとはコーチ代かな。遠征に専属コーチも帯同してもらう場合は、その分の移動費や宿泊費がかかります。ペアでお願いしているチームもあれば個人契約の人もいます。また所属先がその費用を払ってくれるかどうかも交渉次第という感じですかね。
僕の場合は所属先からそこの部分は許可が下りず自己負担でした。ただ、強化指定選手でいる場合は、協会の強化指定の練習に参加すればコーチがいるっていう環境でしたね。
それから、ビーチスポーツなので海での練習には基本的に費用はかかりませんが、強化指定場所にも選ばれている川崎マリエンのビーチコート等を使う場合は施設利用料を払わなければいけません。それもランキング30位内に入っているかどうか等の基準で決まります。 僕は今、有料ですね。

―― なんと!畑辺選手なんか顔パスで行けそうなのに。

畑辺 一緒に施設を利用する人の中にトップ選手がいれば無料で練習できますけどね。

―― ビーチバレーも内部にしか分からない事情がたくさんあるんですね。

お金事情 - スポンサーを離さない秘訣

「自分発信」

最大の価値を

―― ビーチバレーは割と競技人口は多いように思いますが、スポンサー獲得しやすかったりするのでしょうか。

畑辺 僕がビーチバレーを始めた19歳(大学2年生)の頃からしばらくの間スポンサーはいなかったです。当時はビーチバレー競技で大学生にスポンサーがつくということはまず無かったので、僕はずっとバイトでやり繰りしていました。中には親の援助でっていう選手もいましたが。
徐々に試合で勝てるようになりツアーや年間シード獲得し始めて、ようやくスポンサーがついてくれましたね。最初はウェアの商品提供からでした。それだけでも十分有難かったです。

―― そうだったんですね!じゃあバイト歴も長かったんだ。

畑辺 バイトは色々やりました。派遣でデパートのポイントカードの会員営業とか、居酒屋さん、カラオケ店、警備員など。警備のバイトは上京したばかりの頃だったんですが、深夜遅くまでの長時間労働で競技との両立が厳しく、思っていた生活とは程遠くメンタルもやられましたね。本当に大変でした。その中でも、地元の熊本で両親が「純希Tシャツ」っていう応援グッズを作って販売してくれて、多くの方に応援してもらい色んな意味で救われていました。地元の近くで開催される大会にはみんながそのTシャツを着てわざわざ県外に応援しに来てくれたり。

―― 心強いですね。そして絶対に負けられない!(笑)

畑辺 おかげさまでその大会では、3年連続で優勝することができました。

―― さすがです。様々な歴史を経て強化指定選手にまで上りつめた訳ですね。ドラマチック。そんな畑辺選手、今ではたくさんのスポンサーがついていますが各企業に対して普段から心がけていることなどはありますか?

畑辺 僕は日常的に提供してもらっている商品PRをしていますが、単に商品を紹介するのではなく、僕自身が情報発信するということに価値を見出さないといけないと思っています。
たぶんですけど、商品の説明とか効果って一般的に見たら分かる事というかテンプレート的で、言ってしまえば誰でもできそうじゃないですか。僕個人に対して提供してもらう以上は、僕自身の発信にしっかりと意味を持って初めて双方の関係が成り立つと考えています。なので、僕は既存の商品を理解した上で自分なりの使い方やアレンジを加えて「プラスα」で世に出していくような工夫をしています。例えば食品のひとつでも、煮込んだり、じっくり焼いてみたり、合う調味料を探したり・・・色々試して自分的に一番美味しい調理方で紹介するとか。なので、自宅に着々とスパイスが増えていってます。(笑) その食品を使った料理屋さんに行ったこともあります。

―― すごい凝ってる!!それこそプロ意識ですね。企業側にとっては一番嬉しいですし提供する意味があると思います。その物品提供のスポンサーとは別に、最近までアスリート枠という形で企業に就職されていましたが、どういう経緯で?

畑辺 JOCの就職支援サービスで紹介してもらった企業で、元々はセカンドキャリアも見据えたスポンサーというか、競技をやらせてもらう代わりに引退後はちゃんとそこに就職という形で採用してもらったんですよね。
ただ、自分の将来の人生設計をする上で、単に競技だけやっているっていうのも後々のことを考えると不安な部分もあり。例えば仕事を覚えることもそうですし、人とのコミュニケーションや社会経験もなるべく競技と並行して積んでいかなければと思っていたので、現役中も出来る限り何かしらの仕事をさせてもらうよう会社にお願いしました。「そういうことなら!」と理解していただきオフの日は出社して仕事を覚えながら現在までやってこれたのですが、徐々に経営が不安定になり残念ながらスポーツ事業全般の撤退。2019年1月、オリンピックを目前に退社となってしまいました。

―― 急に転職されていたので驚きました。

畑辺 しかも同時期に怪我で手術をしたりプライベートもバタバタしたりで精神的にもなりきつい時期でした。最近やっと諸々落ち着いて、現在はスポーツに理解のある企業の代表の方からお声かけいただき、スポーツ系アパレルブランドでオフの日はアルバイトさせてもらっています。
でもやっぱり今後のことも視野に入れて、ちゃんと就職して週5で働きたいと思っていますね。

―― 新たなセカンドキャリアということでしょうか。

畑辺 そうですね。今回の怪我によって、正直もう第一線には戻れないという思いがあるんですよね。ただ、ビーチバレー自体は今後も休日とかに楽しみとして続けていきたいです。
実は次に考えている就職先にビーチバレーの先輩がいて、去年なんかは藤沢市主催のビーチバレージャパンという大会に出場しているんですよ。なので、もしかしたら僕も代表として出ていくかもしれないです。というか、狙っています。

―― うんうん。やっぱり畑辺選手にはずっと競技を続けてほしいですし、その経験も伝えていってほしいです。

お金事情 - CF(クラウドファンディング) ぶっちゃけどうだった?

習慣こそ
真実

―― 畑辺選手にはこれまで何回かCFに挑戦していただきましたが、率直にどうでしたか?

畑辺 CFは、シンプルに楽しかったっていう感覚です。
色々な発見があって凄く勉強になりましたね。自分を見つめ直す機会にもなったし、それを受けて客観的に自分自身を知ることも出来ました。普段、差し入れやプレゼントのような物をいただいたり、応援の言葉をかけてもらう事はあっても、実際にお金をいただくことってなかなか無いっていうのと、言ってしまえばそれが諸に「現実的」であるからこそ改めて見える部分っていうのは大きかったのかなと思います。
支援してくれた人のリストを後から見ても、(え!この人がこんなに大金を!!)って驚くこともありますし、その逆もしかりです。そういうリアルな現状を実感することによって、例えば自分の発信の仕方を改善しなきゃいけないなって思ったり、自分を知ってもらうだけでなく競技自体の認知度を上げる努力も必要だなって気付いたり。
一言で言うのは難しいですけど、CFって感じるものや考えさせられることがものすごく多い。

―― そういう面ではお金って本当に分かりやすいですよね。おっしゃる通り、良い意味でも悪い意味でも現実を突きつけられるようなもんですからね。ちなみに、これからCFに挑戦しようと思っているアスリートにアドバイスするとしたら、どんなことを伝えますか?

畑辺 CFって募集期間を定めるという意味で、なんとなく単発的なイメージを持たれることも少なくないと思うんですけど、選手個人の日頃の行いや習慣がCFの成立・不成立に大きく影響するんだっていうことをお伝えしたいですね。
普段からファンの方やスポンサー企業に対してどんな振る舞いをしているか、日常的にSNSをちゃんと運用できているか、アグレッシブに地域と共に普及に力を入れているかなど、CFの時だけ一生懸命頑張っても、どんなに完璧を装っても確実に結果に出ちゃうんですよね。そこが大きな差になるってことを僕自身も改めて知ることができました。
それはたぶん、CFという資金調達の枠を超えて、アスリートとして人々からどう評価されているのかっていうことにも繋がるし、その上で各個人がどういう選手で在るべきかという再確認の場になるんだと思います。

―― 確かにほとんどの人がCF実施期間中の告知に意識が偏りがちかもしれない。でも、大前提に普段から応援してくれる人がどれだけいるか、その信用ってすぐに手に入るものじゃないですからね。勉強になります。

畑辺純希の素顔 - アスリートという人生

情愛を持って接する

―― さて、終盤になりますが畑辺選手の「アスリート人生」について、伺っていきたいと思います。ビーチバレーという競技が畑辺選手にもたらしたものって何かありますか。

畑辺 ビーチバレーって他の団体競技や個人競技と違って、「2人チーム」っていうところが特徴的であり魅力でもあります。個々の主張が大人数に分散されることもないし、逆にひとりで自由にできるわけでもないんですよね。それが非常に面白いところだと思います。
競技を続ける中で、常々痛感し苦戦したのは、自分にとっての「普通」がそうじゃなくなること。例えると、1+1=2という当たり前のような概念が必ずしも誰にでも当てはまるわけではない。自分では普通と思っていても、そうでない時があるんです。また別の例えで言うと、分数を知らない人に対して当たり前のように分数の話をしても通じるわけがないっていうのも分かりやすい例かもしれません。自分の言っていることが全然伝わらなかったり、相手の意図が全く見えなかったり。お互いに何を言っているのか分からない事さえあります。
ペア競技(チーム競技)において共通認識は欠かせないって簡単に言いますけど、本当は凄く難しいことなんですよね。何回も話し合いを重ねて、二つの意見や戦略を摺り合わせなければいけないし、言葉だけでなく共に過ごす時間も必要だし。

―― なるほど。2人ってお互いに、お互いしかいないから特に大変ですね。うまくハマれば絶対的な信頼関係を築くこともできるし、どうしてもダメっていう可能性も。

畑辺 個々の主張を巡って口論になることもありますし、分かり合えないまま不満が募って最悪の場合ペア解散っていうケースもしばしば。ただ、そういうことを繰り返していくうちに言葉選びの重要性やノウハウ、いかに相手の気持ちを理解して自分に落とし込むかという技術は身に付いたのかなと思います。どんなに意見が分かれてもペアである以上、大切な同志であることに間違いはなく、情愛をもって接しなければいつまで経っても距離は縮まらない。その学びは僕にとって競技人生で培った最大の武器であり、この先ずっと役立つ知識となりましたね。お互いの意見をすり合わせて共通の目標を目指すって聞くと一見、人として基本的な作業にも思えるし社会に出れば当たり前とも取れるんですが、これらがスポーツの上に成り立つことに意味があり独特で密な関係性において経験できた事が本当に良かったなと思います。

―― 団体競技や個人競技ではなかなか経験できないことかもしれませんね。うらやましいです。

畑辺 もうひとつ競技の魅力でいうと、元々僕はインドアのバレーボールからビーチに転向したんですけど、その二つの違いというか感銘を受けた理由のひとつで、全てのプレーを人任せに出来ない点だなと思いました。6人で行うインドアのバレーボールは、サーブやトス、パス、スパイク、ブロック、レシーブなどそれぞれ役割があって、変な話自分の役割を果たす以外は他者に任せておけるんですが、ビーチバレーはそうはいきません。あの広いコートで、たった2人で戦うのでオールマイティに技術を磨いて確実にこなす必要があります。集中力や体力は不可欠だし一球一球責任も伴いますが、その分ポイント毎の快感は大きいですね。
またインドアに比べて、海という解放的な舞台というのもあってか観客の空気感も全然違います。すごく一体感があるんですよね。敵味方関係なく、良いプレーには歓声が上がる。あの瞬間はぐっときます。

―― そう考えるとめちゃめちゃ激しいスポーツですね。何度かビーチバレーは観戦したことがありますが「感動」の一体感や空気感はわかるような気がします。スポーツが人々にもたらす最も美しい影響のお話が聞けたような気がします。ありがとうございました!

おまけ

オフの日は何してるの?

☆ 最近、釣りにハマってます。

一昨年くらいからYoutubeで釣り動画を見始めて、
獲った魚をその場でさばいて食べるっていうのに
憧れてついに始めました。
現在、釣り仲間募集中です。

釣って食べる!
  まさに男のロマンですね。

☆ お酒&料理が

ストレス発散法!

お酒強そう!

オフの日の前日はよくお酒を飲みますね。
ビーチバレーの試合の後とかも宴会が多くて、
そこでビーチバレー界の情報交換したり、次のシーズンのペアを探したりできます。あと年齢層も幅広いので、楽しいです。
ビール、ウィスキー、焼酎なんでもいけます!

料理はストレス発散でやっています。
「これが食べたい!」っていう気持ちがすごく強いので、その日に食べるものを決めたら食材を揃えて、なんとしてでも食べます!

食へのこだわりを感じます。

試合前のルーティーンって
ありますか?

試合の日の朝ごはんは、
特別鮭が好きって訳ではないのですが(笑)
なんとなく、鮭おにぎりを食べるとパフォーマンスがいいんですよね。

鮭おにぎり!

試合のコートの周りを歩きます。

アップってランニングとかストレッチがほとんどだと思うんですけど、僕は試合前にそのコートの周りをぐるっと歩いてイメージをしっかり持つようにしています。

ビーチバレーしてなかったら、
いま何してた??

学校の先生消防士 かなあ〜・・・

バレーボール選手やってなかったら、
めっちゃ太ってたんだろうと思います。
食べるの大好きなので・・・(笑)

ちなみに一番好きな食べ物は?

鶏肉!

解答がアスリート!

インタビュアー紹介

関口 萌仁香 (せきぐち もにか)

ALLEZ!JAPAN 広報・リエゾン担当 & Connect マネージャー

日本初のアスリート専門クラウドファンディング「ALLEZ!JAPAN」の立ち上げメンバー。
CFプロジェクトはこれまでに100件を超え、2018年は100%の案件を成立に導く。

企業によるFacebookやtwitterなどのビジネス利用が一般的ではなかった2012年から、SNSの情報拡散力およびコミュニケーションツールとしての潜在力に注目し、試行錯誤を重ねながら「SNS広報」のノウハウを独自に蓄積してきました。彼女の手法は、いまでは様々な分野で模倣され・お手本となっています。